:WWDマガジン特別版「GIRLS」

通称「780円で買える蜷川実花」。前々から蜷川実花の作品集は一つ見てみたいと考えていたのだが、高いんですよ写真集って。多分、最も安価に手に入るのは桜井亜美とのコラボレーション作品なのだろうが、桜井亜美って、んー、ちょっとねー、な感じなのでそれらには手を出せずにいた。そんな中でヴィレッジヴァンガードで平積みになっている本書を発見し、しばし逡巡の後ゲット。女性ファッション誌を買うなんて、これが最初で最後かも。
で、実際の中身については、と言うと。
前半を占める――そして恐らくこの本のメインたる――ジェマ・ワードというモデルの存在は正直、どうでもいい感じがした。大半がインタビューだったのでそちらに興味がなかったから、というのもあるのかも知れないが、蜷川実花撮影の3カット(表紙を入れると4カット)についても(「それっぽい」とは思うが)それほど際立った印象はない。
結局、この本の中で一番惹かれたのは加藤ローサをモデルとした作品だった。ゴテゴテに飾られた背景に、これまた派手な柄の服。両者が溶け合って、まるで一枚の抽象画になってしまいそうなところを、モデルの存在がポートレートとして定着させる。加藤ローサの顔っていうのは人形のようで、だからそのような背景と衣装を合わせると完全に絵のようになってしまいそうな気がするのだけれど、不思議な事に二次元には収まらない。その、寸前で留まる緊張感に、目を奪われる。とは言え、額縁を写し込むところまでやったのは演出過剰な気もするが。
本書を手に取った当初は、花や風景といったテーマで撮られた作品集の代替商品と考えていた。蜷川実花の公式サイトを見ていた限りでは、――モニターと紙媒体との違いも大きかったかも知れないが――ポートレートよりもそれ以外の作品の方が魅力的に感じられた。しかしそういった先入観の大部分は、本書に触れた事で払拭されたと思う。独特の粒状感と色使いが息衝く質感に、むしろ囚われそうな気も。

無意識に撮ったもののはずです、多分、恐らく。