:DVD『12人の優しい日本人』

裁判、特に刑事裁判というのは、結局、事件そのものについての判断を下す場ではない。それは証拠資料や証言という材料を用いて、そこにどのようなドラマが展開されていたのかについての推測を行う場所なのだ。何だか裁判に関わる本職の方に見られたら怒られそうな感じだけれど、本作を観た後の最初の感想はそういう事だった。
司法修習生を取り上げたドラマ『ビギナー!』を観た時にもそれは感じた事で、こちらでは真実を求めながらその一方で真実を最終的に立証する事は出来ないというジレンマを抱える司法のプロフェッショナルを目指す人々の姿が印象的だった。しかし本作から感じられるのはむしろ真逆の印象で、確かに演劇や映画といったフィクションのストーリーとしては大変に面白いのだけれど、その裏にあるのは陪審員制度とそこに携わるアマチュアとしての陪審員についてのブラックユーモア、と言うか風刺だ。一つの小さな問題から大風呂敷を広げ、またそれを鮮やかな手捌きで畳み直していく展開は正に三谷幸喜らしいものではあるのだが、その展開に関わる緊張感が、このような「現実に起こり得る危険性」によって支えている事は色々な意味で注目に値する点だと思う。