:映画『逆境ナイン』

昨日観た『姑獲鳥の夏』といい最近原作に触れた事のある作品の映画化が多い。好きな作品の新たな側面が見られると共に、ものによっては世間での認知度が上がるのはそれはそれで喜ばしい事ではあるのだが、だからと言って出来上がるものが良作とは限らない訳である、当然。勿論。『デビルマン』とかねorz
まあそんなトラウマをわざわざほじくり返すような書き出しであれだが、本作は予想以上の出来だった。無駄に熱い。無駄に勢いがある。無駄な気合に満ち溢れている。殴れば必ず体が吹っ飛ぶ。打球に当たっても吹っ飛ぶ。下手すりゃ気迫だけで宙に浮いたりするシーンすらある。満遍なく、と言っていいほどガチガチに力がこもっている。この省エネのご時世に、明らかにチーム・マイナス6%には入れそうにない作品である。だが、それが本作の持ち味であり、メインテーマだ。決して頭脳プレーの野球ではない。むしろアホである。気迫だけで全てにぶち当たり、ボロボロに打ちのめされ、地に這いつくばる。それでも何度も立ち上がる。壁を乗り越える。肉体の限界など考慮されていない。ファンタジーだ。行き過ぎた精神論だ。しかしここまでやられたら、もう何も言えない。むしろ力が湧いてくる。笑いだけではないものが伝播する。それでいて、感動的なラストを用意するよりもむしろ笑いの方面で〆たセンスは素晴らしい。何というか、あくまで芸のカラーを一徹させようとするお笑い芸人のプライドみたいなものが感じられた。
惜しむらくは、主人公・不屈闘志を務めた玉山鉄二の演技が少々小さかった点。周りを振り切って突っ走る熱血ぶりと腰砕けの絶望ぶりの落差は他の作品なら充分な表現、というか過剰なほどだと思われるが、本作品限定で考えるともう一歩踏み込んで欲しかった。あと原作者の島本和彦炎尾燃名義(むしろコスプレかw)で出演していたが、台詞回しが、んー、何つーか、むー、て感じであった。いや、情熱空回りっぷりは良く出ていたので、ファンにとっては決して悪くないかもしれないが。で、その炎尾燃について詳しく知りたい、そして島本和彦をもっとダイレクトに感じたいという方には以下がお勧めですぜ。

FURTHER READING:
島本和彦燃えよペン (サンデーGXコミックス)