ゾーリンゲン・キクイチモンジ。

予備校からの帰り道、市民会館の横にある広場を通り掛かると、人影が3〜4うろうろしている。この広場は夜遅くになると少々柄の悪い方々の溜まり場になる事が多いので、今日もそんなところだろうと考え目を合わせないように横をすり抜けようとすると、その人達が何やら街灯の光を反射する異様に長い物体を手に手に持っている様子。果たしてそれは日本刀だった。よく見てみると、全員が紺色の袴を履いた武道着姿だ。流れるような素早い動きで、居合いのように鞘から刀を抜く。一瞬目を奪われたが、流石にこんな広場の一部とは言え公道に近い場所でしかもこの暗い中真剣だか模造剣しらないけれど振り回している姿は異様さを拭い切れない。なるべく平静を装いながら、結局は目を合わせないようにしてやり過ごした。
この年齢まで生きていると、まあそれなりに変なものを見た経験も多くなり、後から考えると「あれは現実の事ではなくて夢で見た事だったんじゃないかなあ」とか思う事もそれなりにあったりする。そ○うの立体駐車場に鶏がいたりした事とか。今日起こったのもそれと同様の感覚で、そんな至近な事が実は白昼夢だったりするとかなりヤバげな感じだが、でも自転車に乗って通り掛かって事故ったという訳でもないのだからもし幻覚を見たとしたら物理的に損害のなかった事だけでも幸運に感謝せねばなるまい。