切、茹、煮、焼。

修士論文の執筆が終了した後から、母の仕事が節目を迎えて忙しくなった事もあって、再び夕飯の支度を任されるようになっていた。やはりブランクは見過ごしようもなく、味王様も口から光を放った上に一撃必殺で打ち砕けるであろう料理を様々に作って家族から不評を買う。正月過ぎに田舎から送られてきた大根と白菜の処理が目下の懸念材料だったのだが、白菜を炒めてスティック昆布ダシで味付けしたら水分が大量に出た上に何故か浅漬けのような味がした。大根の炒め物をしてみたら、妙にカリコリした部分と柔らかい部分とが渾然一体となって不協和音を奏でた。「シェフの気まぐれ一品料理」は正に気まぐれ以外の何物でもなく、その点だけは非常な成功と言えよう。まあ「科学の進歩に犠牲は付き物」「錬金術は台所から生まれた」などとも言うし、「これ以外に食べるものはありませんよ」と泣く泣く心を鬼にして意地悪な継母のように言い放つ。これはネグレクトに当たるでしょうか。若しくはドメスティック・ヴァイオレンス
それでも一週間で勘を取り戻し、最近は白菜を使った汁物や大根の煮物などで好評を博するようにはなった。何ら手伝う事もしない癖に「ワシ白菜嫌いじゃー」などとほざく弟には勿体無いお化けが枕元に立つのを祈願するとして、これだけ出来れば何時でも嫁入りが出来るであろう。後は相手を見つけるだけの問題だ。どうしようもありませんorz