この命あるもの達の夜。

予備校に通うようになって、帰りが夜遅くなる事が多い。その帰り道に役所の前を通るのだが、最近ここで2匹の猫をよく見掛ける。人に馴れているらしく、こちらが近付いても逃げない。それどころか、こちらに積極的に鳴き掛けるのである。その愛らしさに思わずカメラを手にしてしまったりすると、更に期待を込めた視線をこちらに向けてくる。だが、その取り出されたものが自分達にとって大して価値のない存在だと分かると、途端に「ち、使えねーな」とでも言わんばかりに背を向けて行ってしまう。その態度の二面性は、きっと2匹の強かさなのだ。
野良猫の増加に一役買っているのは、紛れもなく人間だ。飼い猫を捨てたり、無闇に餌付けをしたり。だが、野良猫が増えてしまう事によって、社会生活を営む上で害となる事もある。確かにその対処についての議論は、人間の側のエゴイズムでしかない。そしてそれすら、最早堂々巡りの段階なのだろう。それでも私は、出会ってしまった2匹の名優達がその強かさを以って生きていってくれる事を、真に勝手ながら役所脇の小さな神社に祈らざるを得ないのである。