21日――よく歩いた日。


今回の旅の主な目的は、現地に転勤となったサークルの元後輩宅を襲撃する事。
彼は社会人でこちらは学生という、一種ヒエラルキーの逆転が起こっているような気がしないでもないが無理矢理忘れる事に。
事前に「○○(マンションの名前)と言えばタクシーならすぐ分かりますよ」と聞いていたので約束の時間の30分前に急襲しようと考え運転手に「○○まで」と告げると「えーと……詳しい住所は分からないんですかねえ……」のっけから出足払いを食らった気分。


金沢に到着したのが早朝(6時前)だったため、後輩宅に着いて朝食を取った途端全員爆睡。
昼過ぎから、昼食がてら市内を案内してもらう。
香林坊を歩く。
その先の商店街も歩く。
全然知らない道を歩いていたら兼六園の案内表示を見つけたので、その指示通り兼六園方面に歩く。
兼六園に着いたがあまり入ろうと思わなかったので、通り過ぎてぐるっと一周するかのように香林坊に向かってまた歩く。
香林坊はやけに美容室が目に付いた。
打ち水を兼用しているのだろう、氷の彫刻がところどころで展示されていた。
その効果もあってか、日差しは強いのに風がやけに涼しげだった。
歩くのが久々に楽しいと思えた一日。


……というところで終わるならまとまりがいいですが。
流石に歩き疲れてドトールで一休み。
外に出ると大通りの風景が一変している。
妙にギラギラとした、洋装と和装を合成したような服を身に纏った集団がそこら中に溢れ踊っている。
その周りを見物客が取り囲む。
ラップ、ソーラン節、盆踊り。
ありとあらゆる派手な踊りを一同に集めてみました、というような趣き。
何やら屋台も色々と出ていて、氏神の見えないお祭りのよう。
見物人は兎も角として、踊っている側の高齢層と若年層の温度差がはっきりとしていてそれはそれで面白かったが(オバちゃん達は生き生きし過ぎだろ、というくらい)、何より頭を過ぎったのは「どうやって帰るのか?」という事。
後輩宅からここまで来たバスを降りたバス停は、祭りという状況を前にして全く機能していない。
バスが走るべき道には、踊り狂う人々(やけにいい表情をしたオバちゃんと妙に冷めた表情の若者達)が溢れ返っている。
祭りの当事者達にここまで盛り上がられてしまうと、最早自分が異邦人である事を痛感させられるのみ。
結局自分が最初に感じた風の爽やかさは、観光都市における虚像でしかなかったように心持で、夢から現実への出口のようなバスに乗って後輩宅へ戻っていきました。


22日分はまた明日。